いくつになっても

少し前に、会社から一番近いという理由だけで決めた歯医者へ行った。
事前に口コミを調べてみたが、高評価ばっかりだったので安心していた。

結果はひどい有様だった。

担当してくれた院長はお喋りな方だった。一瞬も止まることのないトーク。
だがしかし独特な話し方なため何を言っているのかほぼ分からない。目を閉じているので、異国の地にいる気分。
心を研ぎ澄ませて聞くと、お経のようだ。
煩悩を捨て、聞き取れたのは「あらら~」とか「おっほ~、いっちょやっちゃうか」など。万事休すだ。

そして極めつけは、マスク越しでも分かるMAXレベルの口臭。
よく見ると機械や道具もレトロで赤さびが浮いている。
帰りたい。止まらない読経で強まっていく口臭の中、私はそうひたすら祈った。

もちろん次の予約をすることなく、終わってすぐ逃げ帰ったのは言うまでもない。


今は場所を変え、とても良い歯医者に通っている。
安心できる先生と、清潔な院内。ありがたい。


今日も行ってきたが、施術中の私はまるで子供のようにプルプルと震え、汗をかきタオルを濡らし鼻水をすすって過ごした。特に痛いような治療は何もしていない。

そう、どちらにせよ私は歯医者が苦手なのだ。

治療が終わり汗だくタオルを外してもらい、まぶしく映る照明。

助手の方も先生も、プークスという感じだけれど優しく微笑んでくれた。
語尾に(笑)を感じるけれど、ゾンビみたいになっている私に皆さん優しくしてくれた。

溜池山王の歯医者でこんなへなちょこなのは私くらいだろう。情けない。
強くなりたい。いや、なれる。打倒!チュイーンという音!

29歳、まだまだ伸びしろはある。そう感じた、そんな一日。

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